私たちの体は、毎日同じように見えて、実はまったく同じではありません。
それどころか、毎日少しずつ作り変えられているのです。
これを福岡伸一先生は「動的平衡(どうてきへいこう)」と呼びます。
耳慣れない言葉かもしれませんが、実は「生命とは何か?」を考えるうえで、とても大切なキーワードです。
見た目は同じ、でも中身は常に入れ替わっている
「動的平衡」とは、一言でいうと――
壊しながら作る、作りながら壊す。その流れの中で保たれるバランスのこと。
つまり、見た目には変わらないけれど、
中では常に変化が起きている。これが動的平衡です。
身近な例で考えてみる
たとえば川の流れを思い浮かべてください。
川は同じ場所を流れているように見えますが、
中の水は常に入れ替わっていますよね。
あるいは、古いお寺が何百年も建ち続けているように見えて、
実は柱や瓦が修理・交換されているように。
形は同じでも、中身は少しずつ変わっているのです。
私たちの身体も「流れの中」にある
福岡先生は言います。
「生命とは、流れの中にある存在だ」
私たちの体も、例外ではありません。
たとえば、皮膚の細胞は数週間で入れ替わり、
腸の細胞は数日、骨や筋肉も1年くらいで新しくなっています。
でも、自分のことを「昨日とは違う人間だ」と感じる人はいないでしょう。
それは、姿かたちを保ったまま、常に作り変えられているからです。
生命とは、「止まらずに変わり続けるもの」
動的平衡の最大のポイントは、止まった瞬間に生命は死ぬということ。
変化があるからこそ、生きていられる。
この視点で見ると、生命は「物」ではなく、
プロセス(過程)としての存在だと言えます。
おわりに――「生命とはなにか」に対する新しい視点
構造色が「光の反射構造による色」であるように、
生命も「ただの物質の集まり」ではありません。
見えない流れの中で、壊され、作られ、入れ替わりながらも、
ひとつの姿を保ち続けている――
それが福岡伸一先生の語る「動的平衡」であり、
生命の本質なのです。


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